結論:古物商は、盗品かどうかを自分で確定してから動く必要はありません。法令上の取引場面で不正品の疑いを認識したときは、警察官へ直ちに申告します。一方、警察からの「品触れ」、被害者等からの回復請求、警察による「差止め」は、それぞれ別の制度です。連絡を受けたら、まず何の制度・手続なのかを確認しましょう。

盗品かもしれないと思ったら、まず状況を分ける

「盗品だと確信できるまで何もしなくてよい」と考えるのは適切ではありません。法15条3項は、一定の取引で不正品の疑いを認識した場合の申告を定めています。反対に、警察から連絡があったというだけで、すべてを品触れや差止めと決めつけることもできません。

今起きている状況を、次の早見表から探してください。

盗品の疑い・品触れ・警察対応の早見表

状況誰が起点?古物商の対応タイミング・期間ポイント
不正品の疑い古物商が取引中に認識警察官へ申告直ちに犯罪や盗品を自分で確定する制度ではありません。
品触れ警察本部長等到達日を記録して保存し、対象品を確認原則6か月対象品の情報を照合します。全在庫の一律販売停止ではありません。
品触れ対象品を所持・受領品触れを受けた古物商警察官へ届出該当時、直ちに受領日などの状況を整理し、品触れの対象と照合します。
盗品・遺失物の回復被害者・遺失主等法20条の要件、物品、請求者を確認盗難・遺失から原則1年取引日から1年ではありません。請求に応じるかは個別要件の確認が必要です。
差止め警察本部長等命令対象の古物を保管命令で定める期間。上限30日以内対象品・期間・命令内容を確認。差押えとは別です。
通常の警察照会・協力依頼連絡内容による制度・根拠・対象・求められる内容を確認連絡・根拠に応じる一律に「任意」または「命令」と決めず、具体的な手続を確認します。
たとえば:仕入れた商品の説明に不自然さを感じても、それだけで犯罪を断定する役割が古物商にあるわけではありません。大切なのは、疑いを認識した取引場面で申告義務を意識し、警察からの通知は書面や連絡内容に沿って扱うことです。

「不正品の疑い」を認識したとき

盗品かどうかを自分で確定する必要はない

法15条3項は、古物商が古物を買い受ける場合、交換する場合、または売却・交換の委託を受ける場合に、不正品の疑いを認めたときは警察官へ申告するよう定めています。条文上の基準は「疑い」であり、盗品だと確信した場合だけに限られません。

この規定は、古物商に犯罪の捜査や最終判定をさせるものではありません。取引で疑いを認識したら、独自に結論を出そうとせず、状況を整理して警察官へ申告します。「直ちに」を「30分以内」「当日中」などの一律の時間に置き換える根拠はありません。

「不正品」は「盗品等」より広い

警察庁の2026年5月14日版「古物営業法等の解釈運用基準」は、法15条の「不正品」を、盗品等に限られないものとして説明しています。したがって、窃盗・強盗の被害品だけを思い浮かべて対象を狭めないようにしましょう。ただし、読者が特定の事情をチェックリストで判定できるかのような独自の犯罪一覧は作れません。

ここがややこしい:法15条の「不正品の疑い」と、法20条の回復制度でいう「盗品」は同じ言葉・同じ範囲ではありません。どの条文の制度を扱っているかを分けて確認してください。

品触れを受けたとき

品触れは、警察から古物商へ発せられる盗品等に関する通知です。通知された物品の特徴などを確認し、該当する古物を扱っていないか照合します。

品触れを保存する

書面で受けた場合は、到達した年月日を記載し、原則として到達日から6か月間保存します。電子的な方法で受けた品触れについては、法令上、到達年月日の記載に関する扱いが書面と異なります。電子で受けたものに紙と同じ到達日記載を機械的に求めず、受信記録を含めて通知の内容と到達を確認できる状態で取り扱ってください。保存期間その他の要件は、現行法と通知の形式に従います。

対象品を所持・受領した場合

品触れを受けた日に該当する古物を所持していた場合、または品触れの保存期間中に該当する古物を受領した場合は、警察官へ直ちに届け出る必要があります。該当の有無を確認するため、品触れの記載と現物・取引情報を照合しましょう。

品触れが届いたことだけで、関係のない商品を含む全在庫の販売を止めるという意味にはなりません。対象となる古物を特定し、通知に記された範囲に沿って対応します。

「疑いを認識したとき」と「品触れ」は違う

古物商が起点

不正品の疑い

根拠:法15条3項

対応:取引場面で疑いを認識したとき、警察官へ申告。

警察からの通知を待つ制度ではありません。

警察が起点

品触れ

根拠:法19条

対応:通知を保存・確認し、該当品を所持または受領したときは届出。

古物商が最初に疑いを持った場合の申告とは別の制度です。

盗品・遺失物の回復を求められたら

被害者・遺失主から回復を求められる場合

法20条は、一定の条件のもとで、盗品または遺失物の被害者・遺失主が古物商に対して無償回復を求められる場合を定めています。対象物、取得の経緯、請求者、期間などの要件を確認してください。すべての申出が当然に法20条の要件を満たすとは限りません。

期間は盗難・遺失から原則1年

期間の起算点は、古物商が買い受けた日ではなく、盗難または遺失の時です。取引から1年と誤解しないでください。法20条には対象や期間に関する条件があるため、個別の請求では条文と事実関係を照合します。

法20条の「盗品」の意味

警察庁の現行解釈運用基準では、法20条の「盗品」は、窃盗または強盗によって占有を奪われた物を指すと整理されています。詐欺・恐喝・横領による物を、この条文の「盗品」と同一のものとして説明しないよう注意が必要です。これらの行為に関する権利関係を本記事で一括判断することはできません。

すでに販売・譲渡していた場合:取引記録、商品、相手方、取引時期を確認し、警察からの連絡や当事者からの請求内容を整理します。必ず買い戻す・返金する・賠償する、または購入者から必ず回収するとは一律に断定できません。具体的な権利義務は個別事情に応じて確認してください。

警察から差止めを受けたとき

差止めは指定品を保管する制度

法21条の差止めは、盗品等に当たる疑いのある古物について、警察本部長等が古物商に保管を命じる制度です。通知・命令に示された品物、期間、保管などの内容を確認し、対象品を区別して扱います。

期間は30日以内

差止め期間には法定の上限があり、30日を超えることはできません。実際にいつまで保管するかは、個別の命令に記された期間を確認します。上限の日数が常に命令されるという意味ではありません。

差止めと差押えは違う

差止め(法21条)

盗品等の疑いがある指定古物を、調査のため古物商が保管します。警察庁の解釈運用基準は、差止めによって所有権・占有権が移るものではなく、刑事手続上の差押えとは異なると整理しています。

差押え

刑事手続における別の手続です。警察が関与する点だけで差止めと同じ制度と扱わず、受け取った書類や説明に記された手続名・根拠を確認してください。

警察から問い合わせ・協力依頼が来たとき

警察からの連絡には、法19条の品触れ、法21条の差止め、法22条3項に基づく報告要求、一般的な照会や任意の協力依頼など、異なるものがあります。法22条3項は、警察本部長等が古物商に対し、盗品等に関して必要な報告を求めることができる旨を定めています。一般的な問い合わせと同じものとして扱わない一方、あらゆる連絡を法的命令と決めつけるのも適切ではありません。

落ち着いて、次の5点を確認しましょう。

誰から?
何の制度?
対象は?
何を求める?
期限は?

書面の有無、根拠条文、対象となる商品・取引、求められている報告や保管、回答期限を確認し、不明点は連絡元へ確認してください。

本人確認・古物台帳が事後確認の基礎になる

連絡や請求を受けた後に、誰と、何を、いつ取引したかをたどれる記録は、事実関係の確認に役立ちます。本人確認の基本は古物商の本人確認ガイド、記録項目や保存の考え方は古物台帳の解説で確認できます。

査定、顧客情報、取引履歴、古物台帳、帳票などを整理する業務ツールとして、MINE PRIMEの機能紹介もあります。ツールが盗品を検知・判定したり、品触れと連携したり、警察への申告を自動化したりするものではありません。

よくある誤解

疑いだけなら申告不要

誤解:盗品と確定できないと申告できない。

実際:法15条3項は不正品の「疑い」を認識した場合を定めています。

品触れ=盗品確定

誤解:通知された商品は盗品と決まった。

実際:情報を照合し、通知に基づく保存・届出を行う制度です。

品触れ=全在庫停止

誤解:店の商品を全部販売できない。

実際:対象古物を確認し、該当する場合に法令上の対応をします。

差止め=差押え

誤解:名前が違うだけで同じ手続。

実際:差止めは古物商による保管を命じる制度で、刑事手続上の差押えとは別です。

盗品なら全部同じ回復制度

誤解:不正な経緯があれば法20条が同じように適用される。

実際:法20条の「盗品」の範囲や要件を確認します。

警察の連絡は全部同じ

誤解:どの連絡も照会か、どれも命令のどちらか。

実際:品触れ・差止め・報告要求・一般照会などを区別します。

ケース別に対応をイメージする

査定中に不正品の疑いを認識した

状況:買受けの検討中、取引上の事情から不正品の疑いを認識。

制度:法15条3項の申告。

対応:疑いを認識した状況と取引内容を整理し、警察官へ直ちに申告します。

注意:犯罪を自分で確定してから申告するのではありません。

警察から品触れが届いた

状況:通知に品物の特徴が記載されている。

制度:法19条の品触れ。

対応:受領形式に応じて保存し、記載内容を在庫・取引情報と照合します。

注意:該当品が見つからない段階で、全在庫を一律に販売停止する趣旨ではありません。

在庫に品触れ対象品があった

状況:品触れを受けた日に所持、または保存期間中に該当品を受領した。

制度:法19条に基づく届出。

対応:品物と通知の一致を確認し、警察官へ直ちに届け出ます。

注意:対象品と受領・所持の時点を正確に整理してください。

過去の買取品について被害者・遺失主から連絡

状況:すでに販売した品について、回復を求める連絡を受けた。

制度:法20条の適用要件等を確認する場面。

対応:取引記録、品物、相手方、盗難・遺失の時期、請求内容を整理します。

注意:一律の買戻し・返金義務を断定せず、個別の権利関係を確認します。

警察から差止めを受けた

状況:特定の古物について保管を求める命令を受けた。

制度:法21条の差止め。

対応:対象品・命令期間・保管方法を確認し、指定された範囲で保管します。

注意:差押えと混同せず、命令内容に不明点があれば連絡元へ確認します。

図解:何が起きた?

自分で不正品の疑いを認識

取引中に疑い
法15条3項
警察官へ申告
直ちに

警察から品触れ

品触れを受領
保存・対象確認
該当品あり
警察官へ届出
回復の申出

被害者・遺失主等から連絡 → 法20条の要件・物品・期間を確認

差止め

警察から命令 → 指定された古物を命令期間中保管

図解:4制度を比較

制度起点何をする?期間の要点
不正品の疑い(15条)古物商警察官へ申告直ちに
品触れ(19条)警察保存・対象確認、該当時届出原則6か月保存
回復(20条)被害者・遺失主等法定要件を確認盗難・遺失から原則1年
差止め(21条)警察指定品を保管命令期間。上限30日以内

図解:警察から連絡が来たら

連絡元を確認
制度・根拠を確認
対象・依頼内容を確認
期限と記録を確認

まとめ

古物商が不正品の疑いを認識したときの申告、警察からの品触れ、法20条の回復、法21条の差止めは、起点も対応も異なります。警察から連絡があった場合も、手続の名称・根拠・対象・期限を確かめてください。盗品かどうかを独自に確定したり、売却済み商品について一律の返金・賠償を判断したりする記事ではありません。

参考にした一次情報

法令の一般的な内容を整理した記事です。個別の品物、請求、警察の通知・命令に対する対応は、その文書と事情を確認してください。