iPadをHDMI外部モニターとして使えるアプリ「Mobile Display」をアップデートし、バージョン1.3をリリースしました。今回の目玉は、映像の横倍率と縦倍率を個別に変更できるようになったことと、スライダーに加えて数値入力で細かく調整できるようになったことです。従来通り「縦横比を固定」したまま使うこともできるため、既存ユーザーの基本的な操作方法は変わりません。

この記事では、Mobile Display 1.3で何が変わったのか、なぜ新機能を増やすのではなくこの方向を選んだのか、そして横倍率・縦倍率の個別調整が具体的にどんな場面で役立つのかを、開発の裏側も交えて紹介します。

目次

Mobile Displayとは?iPadをHDMIモニター化するアプリ

「Mobile Display」は、UVC(USB Video Class)対応のキャプチャデバイスを使って、ゲーム機やカメラ、PCなどのHDMI映像をiPadに表示できるモニターアプリです。無線接続にありがちな遅延や画質の低下を避け、有線接続で安定した映像をiPadの高精細な画面で確認できるのが特徴です。

iPadの画面にNintendo Switchのプレイ中映像を映しながらプレイしている様子

Mobile Displayには、拡大縮小や表示位置の変更、回転、左右反転、明るさ・コントラスト・彩度の調整、表示設定ロック、プロファイル保存といった機能がすでに一通り揃っています。今回の1.3は、こうした「映像を表示する」という中心部分を、さらに自由に調整できるようにしたアップデートです。

機能を増やすか、質を上げるか。1.3で選んだ方向

Mobile Displayは機能がある程度揃ってきたため、今回のアップデートを考えるときに「さらに新しい機能を増やすか」「今ある機能の使いやすさを上げるか」という選択がありました。PiPや動画録画、グリッド表示なども候補にはありましたが、1.3では機能を横に広げるより、「iPadに入力された映像を、より自由かつ正確に表示する」という本来の役割を強化することにしました。

機能がある程度揃ったアプリは、何でも追加していくより、既存機能の自由度や使いやすさを上げる方が合っている場合もある、というのが今回の開発判断です。

一番大きな変更:横倍率と縦倍率を個別に設定可能に

これまでのMobile Displayは、映像の倍率を縦横同時に変更する仕組みでした。例えば1.2倍にすると、横も縦も同じ1.2倍になります。

1.3では「縦横比を固定」をOFFにすることで、横倍率1.33倍・縦倍率1.00倍のように、横と縦を別々に指定できるようになりました。普段は従来どおり「縦横比を固定」をONにしたまま使えるため、既存ユーザーの操作感はほぼ変わりません。必要なときだけロックを解除して、横と縦を個別に調整する、という使い方です。

Mobile Display 1.3で追加された横倍率・縦倍率のスライダーと数値入力欄

横・縦倍率の個別調整が役立つ具体的な場面

横倍率と縦倍率を分けて指定できるようになったことで、以下のような場面での調整がしやすくなりました。

  • 入力映像の比率を自分で補正したいとき:キャプチャデバイスや入力元によって、表示したいサイズや比率が微妙に合わない場合に調整できます。
  • 古いゲーム機や特殊な解像度の映像を扱うとき:4:3系や特殊な解像度の映像を、自分の好みの表示比率に合わせられます。
  • カメラ映像を横方向だけ伸ばしたいとき:用途に応じて片方向だけの調整が可能です。

横1.33倍・縦1.00倍のような設定にすれば、簡易的なデスクイーズ(アナモルフィック映像の補正)用途にも使えます。ただしこれはアナモルフィック専用の機能として作ったわけではなく、横と縦の倍率を自由に変更できるようになった結果、こうした使い方もできるようになった、という位置づけです。

4:3や16:9のプリセットではなく「プロファイル保存」を活かした理由

開発中には「4:3」「16:9」「1.33x」のようなプリセットを用意する案も検討しました。ただMobile Displayには元々、表示設定を「プロファイル」としてユーザー自身が保存できる機能があります。

そこで今回は、アプリ側が用途を決めてプリセットを大量に用意するのではなく、ユーザーが好きな表示状態を作ってから必要に応じて名前を付けて保存する、という既存の仕組みを活かすことにしました。「Switch」「PC」「レトロゲーム」「カメラ」「1.33x」のように、自分の用途に合わせて保存できます。プリセットで選択肢を絞るより、こちらの方が自由度が高く、UIも複雑になりにくいと考えています。

スライダーだけでなく数値入力にも対応

もう一つの大きな改善が数値入力への対応です。従来は倍率や表示位置をスライダーで調整していましたが、スライダーは素早い調整には便利な一方、「1.33倍にしたい」「横位置を+25にしたい」のようにピンポイントで合わせるのは苦手でした。

1.3では表示されている数値をタップすると、横倍率・縦倍率・横位置・縦位置をそれぞれ直接数値で入力できるようになりました。従来のスライダーを置き換えたわけではなく、両方とも残しています。スライダーでざっくり感覚的に合わせ、最後に数値入力で正確な値へ合わせる、という使い分けを想定しています。

個別リセット・ピンチ操作・回転時の挙動も調整

細かい部分ですが、実際に使ったときの引っかかりを減らすための調整もいくつか行いました。

  • 項目ごとのリセット:横倍率だけを1.0に戻す、といったように、変更した項目だけを個別にリセットできるようになりました。ダブルタップによる従来のリセット操作も維持しています。
  • ピンチ操作時の比率維持:横1.33・縦1.00のように縦横を別々に設定した状態でも、画面上でピンチ拡大・縮小をすると、その比率を保ったまま全体を拡大縮小できます。せっかく設定した比率がピンチ操作で1:1に戻ってしまうことはありません。
  • 回転時も「見えている横」が横になる:Mobile Displayは映像を0度・90度・180度・270度に回転できますが、単純にX軸・Y軸で倍率を持つだけだと、90度回転したときに「横倍率を変えたのに縦に伸びる」という直感に反する動きになってしまいます。1.3では、画面上で実際に見えている横方向・縦方向を基準に倍率が反映されるよう調整しました。
  • 旧プロファイルとの互換性:横倍率・縦倍率・縦横比固定のON/OFFも既存のプロファイル保存機能に含まれるようになりました。以前のプロファイルは「横倍率=縦倍率=従来の倍率、縦横比固定=ON」として読み込まれるため、アップデート後も以前の表示状態は変わりません。

見えないところでは映像処理も見直し

今回のアップデート作業の中で、映像処理まわりも見直しました。画質調整側の映像処理で使っていたCIContextの生成方法を見直し、インスタンスを再利用するように変更しています。また、低遅延表示(AVCaptureVideoPreviewLayerを使用)中にも画質調整用のフレーム処理が裏側で動いていたため、低遅延モードでは不要な処理を停止するようにしました。

見た目には分かりにくい変更ですが、Mobile Displayは長時間映像を表示し続ける用途も想定されるアプリなので、こうした処理負荷の見直しも新機能の追加と同じくらい重要だと考えています。なお、バッテリー消費や発熱について具体的な改善数値は計測していないため、ここでは触れていません。

多言語対応と自動テストで確認したこと

今回追加したUIについても、日本語・英語・アラビア語・スペイン語・ドイツ語・ヒンディー語・フランス語・ポルトガル語(ブラジル/ポルトガル)・ロシア語・韓国語・中国語(簡体字/繁体字)の既存ローカライズに反映しました。App Storeの「プロモーション用テキスト」「このバージョンの最新情報」についても同じ言語分を更新しています。

表示倍率や旧プロファイルとの互換性に関わる変更のため、XCTestによる自動テストも追加しました。旧プロファイルの読み込み、新プロファイルの保存・読み込み、倍率や表示位置の上限・下限、ピンチ操作時の縦横比維持、0/90/180/270度それぞれでの横・縦倍率、数値入力のバリデーションなどを含む14件のテストを実行し、いずれもPASSしています。

実際の操作イメージは、以下の動作確認動画でも確認できます。

Mobile Display 1.3 動作確認動画(YouTube)

まとめ

Mobile Display 1.3は、大きな新機能を一つ追加したアップデートというより、「映像を表示する」というアプリの中心部分を、より自由かつ正確に調整できるようにしたアップデートです。

  • 横倍率と縦倍率を別々に変更可能に
  • 縦横比固定のON/OFF切り替え
  • 倍率・表示位置の数値入力
  • 項目ごとの個別リセット
  • ピンチ操作時の比率維持、回転時の挙動調整
  • プロファイル保存への対応(旧プロファイルとの互換性維持)
  • 映像処理の負荷軽減

Mobile Displayには基本的なモニター機能がすでに一通り揃っています。今後も機能の数を増やすことだけを目指すのではなく、実際に使ったときに不便なところ、もう少し自由に調整したいところを見ながら改善していきたいと考えています。

入力映像の比率が合わずに困っていた方や、表示調整をもっと細かく追い込みたい方は、ぜひアップデートして新しい横倍率・縦倍率の調整を試してみてください。

みなさんの声をお聞かせください!

Mobile Display 1.3を使ってみた感想や、「こんな表示調整ができたら便利」といったご要望があれば、ぜひ気軽に教えてください。

アプリの詳しい機能や対応機種については、以下のアプリ詳細ページをご覧ください。

Mobile Display アプリ詳細ページ